2008年2月12日火曜日

美酒を愛でる会

本郷通りから菊坂を下り始めると、周りの様子は一変する。生活感豊かな下町風情に、何故か「帰って来たような」不思議な感覚に襲われる。
古に本郷区菊坂町七十番地に居を構えた明治の天才・樋口一葉の「奇跡の十四ヶ月」(1895年1月『たけくらべ』の連載を開始から完結まで、その間『大つごもり』、『にごりえ』、『十三夜』、『わかれ道』を発表し、その数ヶ月後逝き急ぐように24歳で夭逝した)に思いをはせながら、250メートルも歩くと、目的地である「そば処」に到着。

今夜は、我が一行総勢18名で貸し切り状態。定刻前だが、中をのぞくと、既に数名が到着。19時にはほぼ顔を揃え開宴となる。
既にグラスが三つ用意され、店の主人の説明の後で口開けとして供されたのは、いまやその名も高き蔵元となられた福井県吉田郡永平寺町の黒龍酒造の長期低温熟成純米大吟醸「石田屋」、四合正価一万円強がプレミアで五万は下らないとか、いやいや一杯数万だとか伝説の絶えない酒。口に含むとほのかな甘みが香り、するりとした喉ごしはシルクのよう、主人の御指導に従い口を閉じて喉から立ち上がる独特の木香を堪能する

さらに並ぶは、もはや修辞無用の銘酒、「十四代」二種。この時点で、贅を尽くした今宵の企みに、軽い眩暈すらおぼえる。「醸し人九平治」(聞き逃したが『別誂』だろうか)、限定ものも「東洋美人」、「磯自慢」と引きも切らず。ただただ美酒に悶絶の時がゆく。

冷蔵庫の前で、物欲しげに中を覗くと、主人が傍らから声をかけてくれた。
「こんなのもどうですか?」
むろん、有り難く頂戴した。
「こんなもの」とは、「十四代」さらに二種、しかもその一つは「十四代 龍泉 大極上諸白」。至福と云わずになんと表現した良いのか.....

甘めのつゆの「鴨抜き」も美味、〆の蕎麦は立派な更科でこれも旨い。
気がつけば23時に近く、お開き。夢のような時間だった。

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