2008年3月6日木曜日

二兎社公演『歌わせたい男たち』


紀伊國屋ホールで二兎社公演『歌わせたい男たち』を鑑賞。作演出は二兎社主催の永井愛。何故か、今で永井作品を観る機会がなかったが、今回は再演となるこの芝居の評判の高さを知り、楽しみに出かけた。
「歌わせたい男たち」の歌わせたい歌とは、「君が代」。

都立高校の音楽講師の仲ミチル(戸田恵子)は、初めて迎える卒業式で、国歌斉唱の伴奏をするようにと校長の与田(大谷亮介)から命じられるが、、ピアノが大の苦手、アガリ性でもある。「私のせいで厳粛な式が台無しになっては……」と、早朝から音楽室にこもり練習に励むが、極度の緊張で具合が悪くなる。そこへ与田や英語教師の片桐(中上雅巳)、社会科教師の拝島(近藤芳正)も出入りして・・・・・・。
 実は、「君が代」の斉唱を拒否し、着席してしまう者が出たら、校長の指導力が問われかねない事態に、ピアノ伴奏者への期待は大きい。

芝居は、不起立・斉唱拒否を貫こうする近藤演じる拝島を校長の与田(大谷)が説得し、あの間挟まれ困るミチル(戸田)という図式が中心で進む。
随所に皮肉を込めたユーモアが、笑いを誘う。だが、笑いながら、笑ってばかりはいられない空寒さを感じる。
ラスト近く、「内心の自由」(日本国憲法19条:思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。)の重要性を説いたかつての自らの主張を暴露され、切れた与田が必死で演説する。「(起立しようと、斉唱しようと)『内心の自由』は犯されない。思うことは自由だ。むしろ、不起立や斉唱拒否は、もはや『内心』でなく『外心』(??)だ。外心の自由は保証されていない」。まさに愚にもつかない詭弁に、場内爆笑。
だが、こうした詭弁が、現実に珍しくないことに気づくと、権力の狡猾さとそれに翻弄される衆愚の危機に恐怖感さえ感じる。
考えさせられることの多い芝居だった。

0 件のコメント: