2008年6月5日木曜日

『オットーと呼ばれる日本人』



新国立劇場中劇場で「オットーと呼ばれる日本人」を観賞。
太平洋戦争開戦前夜の当時の日本のみならず世界を驚愕させた国際スパイ事件「ゾルゲ事件」をモチーフに劇作家・木下順二が1962年に発表した戯曲。
事件の日本側主犯として逮捕、刑死した尾崎秀実がモデルの”オットーと呼ばれる日本人”を吉田栄作が演じた。膨大な台詞量、しかも英語も多いが、3時間以上にわたる長丁場を快宴した。語学力に乏しい観客としては、英語台詞(一部ドイツ語)のやり取りを背景の字幕におうことになり、なかなか芝居に集中できない。リアリティーを追求した演出なのだろうが、芝居として楽しむには英語の台詞量が多すぎる。
 だが、「日本ために」、「平和のために」と私利私欲のない一貫した愛国者として描かれる”オットーと呼ばれる日本人”(尾崎)の姿には、その後の歴史を知り現実を生きるものとして万感迫る思いを感じる。
 
 尾崎の望んだ平和も、ゾルゲが信奉した国際共産主義運動も、泡沫の夢。
 凄惨な戦争を経、イデオロギーの対立を経、人類は学び世界は変わったのだろうか。

終演後、雨上がりの街を初台から新宿まで歩く。
尾崎が守ろうとした国の空は深く重い雲に覆われ陽はみえなかった。

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