2007年12月23日日曜日

ミュージカル「モーツァルト!」中川晃教バージョン


ミュージカル「モーツァルト!」を再鑑賞。
今回はモーツァルトを中川晃教が演じるバージョン。今や押しも押されぬミュージカル俳優だが、2002年「モーツァルト!」の初演で初めて中川晃教のパフォーマンスに接した感動はむしろ驚愕だったことを記憶している。まさに才気煥発と評すべき、舞台狭しと駆け回り、まるで天上に駆け上るがごとき歌声。その後の中川の活躍は云うまでもない。さて再々演での中川モーツァルトは。
そのエネルギッシュさがさらに倍増、完全に芝居全体を引っ張り舞台を自分のものにしてしまっている。一幕でナンネール役の高橋由美子の声が少しかすれて、「不調か?」と思わせたが、二幕ではその不安を感じさせずに復調。涼風真世のヴァルトシュテッテン男爵夫人はやはり圧感、ウィーン行きを迷うモーツァルトに「・・夜空の星から降る金を探しに知らない国 なりたない者になるため 星からの金を求め 一人旅に出て行くのよ 険しい路を越えて 旅に出る。」(「星から降る金」)と諭し歌う場面の存在感は神々しいまでだ。
  
  中川モーツァルトの熱演に触発されたのか、ベテラン陣の山口祐一郎、市村正親もノリがよい。
「・・・自分の影から逃れられるのか 自分の運命を拒めるのだろか 殻を破り生まれ変われるのか 自分の影から自由になりたい・・・・自由になりたい」(「影を逃れて」)と歌い一幕目を閉じるあたりでは、感涙。
  今回が初参加のコンスタンツェ役のhiro、演技力はまだこれからだが、さすがかつてSpeedのボーカル、やはり歌はう上手い、広い声域を縦横に使って聴かせる。「ダンスはやめられない」の歌唱に関しては歴代コンスタンツェ(松たか子、西田ひかる、木村佳乃)のなかでも、最も聴きごたえがあると感じた。
  
  終盤、苦悩するモーツァルトを中川は鬼気迫る演技で訴えかける。自らの内面でもあるアマデ(子役)との葛藤、やがて決別。それが、まさに自我の分裂、そして死。
「神がつかわした奇跡の人 時をこえ輝く永遠の星よ・・・世界果てる日まで奇跡は終わらない・・・」(「モーツァルト!モーツァルト!」)
幕が下りても、熱気はさめやらない。
当然、満場スタンディグ、中川モーツァルトの希代名演であった。
  
  先日の井上芳雄演ずるモーツァルトがスタンダードとするなら、まさに中川モーツァルトはややデフォルメされたとも云えるかも知れない。しかし、その躍動感、そして自らの才能ゆえに苦悩し自我の分裂にいたる過程のリアリティは称賛にのみ値する。
いずれのモーツァルトも次回の進化が今から楽しみだ。

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