2007年8月14日火曜日

イタリアンの魔力






20年も前は、街中にフレンチレストランが林立していた。今やそのステータスを奪ったのは、イタリアンだ。シティホテルのメインダイニングが、フレンチからイタリアンに変わったところも少なくない。当時、所謂高級イタリアンレストランが、都内にもでき始め、イタリア料理=スパゲティ=ナポリタン&ミートソースという貧困なイメージしかなかった食文化に、衝撃を与え始めていた。今や、カジュアルなトラットリアから居ずまいをたださねばならないようなリストランテまで、あらゆるシチュエーションで利用できるイタリアンの飲食店が街中にあふれている。
だが、「思い立ったら、イタリアン」。そんな我が儘が許される気軽さが、イタリアンの真骨頂と勝手に思っている。
 以前、知人に紹介されて、何度も利用したイタリアンレストラン「Z」だが、何となくタイミングが合わずに、ここ1年以上ご無沙汰。だが、今日「思い立った」。
 シェフ一人で切り盛りする小さな店だが、味は間違いなく一流。久々の邂逅jに胸が高鳴る。
挨拶を終えて、まずは水を注文した。今日のように暑い日は、ガス(炭酸)入りミネラルウォーターが喉と身体を癒してくれる。以前は、銘水サンペリグリノが供されたのだが、見たこともないボトルがでてきた。訊けば、ナポリの水で7歳以下は引用禁止の硬水。
爽やかに喉をくすぐる炭酸としっかりとした重み、後味にほのかな苦味を残していく。こういう水は大好物だ。
水に感動するうちに、皿にすき間無く並べられた前菜の盛り合わせが登場。特に、茄子のカポナータは絶品。スプマンテで乾杯このあたりで、既にイタリアンの魔法にかかってしまう。
二皿目は、フレッシュ・サンマルツァーノトマトのソース、ズッキーニとパンチェッタの二種のパスタ。夏らしい一皿だ。「最近は日本でも作るようになったので、サンマルツァーノトマトのフレッシュが手にはいるようになりました。今が最盛期です。」と、シェフ。 くどくない酸味がパスタを引き立てている。さらに秀逸なのが、塩味うすめのパンチェッタで味付けられたズッキーニとパスタ。ズッキーニがこんなに美味い野菜だったのかと、再確認。当然だが、完璧なアルデンテに茹で上げられたパスタが上質のオリーブ油と絡まり、歯ごたえ喉ごし共に申し分なし。
でも、ここで終われない。魔法がかかった胃袋をイタリアンモードにギアチェンジ。
この店で初体験した感動のカラスミのパスタと我が青春の思いでであるボンゴレ・ビアンコを追加注文。カラスミを粉状にしてまぶしたパスタに、ルッコラが少量あえてある。このパスタとドライな白ワインとの相性の良さに異を唱える者はいないだろう。ボンゴレも浅蜊のジュースがパスタにしっかりと味をつけ、瞼を閉じれば潮騒の音が聞こえそう。
 ボンゴレ・ビアンコの思いでは30年前、原宿表参道にあったイタリア料理屋「トスカーナ」。仲間と折ふれては集まり、そこでいつも注文したパスタだった。ナポリタン&ミートソースから卒業させてくれたイタリアンの原点とも云える。そんな、イタリアン体験をシェフに語りながら、ついに二人でパスタ4人前を平らげてしまった。
連れ合いがデザートを頼むと、リコッタチーズのレアチーズケーキが登場。しかも、レモン風味のグラッパがトッピング。黙ってられない「ぼっ僕にも下さい」と、思わず。当然、グラッパ、ついでにレモンリキュールもお味見。さらに、高級グラッパも口開けを一杯頂きながら、イタリアワイン談義。なかなか魔法はとけない・・・

食べ、飲み、語る、イタリアンの魔力は侮れない。
 でもその魔力で、幸せな時間が過ごせるこは確か。

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